統計学・計量経済学のテキスト
今回は統計・計量のテキスト紹介です.
僕は学部時代から統計・計量が特別得意なわけではありませんでした.
院試でも統計は全く使っていませんし,学部生向けの感じになるかなと思います.
しかしながら,得意ではなかったゆえにあれこれテキストを読み比べたりしましたし,ちょっと躓いている人などへのヒント程度にでもなれば嬉しいです.
個人的には,卒論を書く時には役に立つかなと思っています.
基本は統計学
鉄板のテキストは東京大学出版会のものでしょう.
詳しい説明が多く,証明もそれなりにきっちりやってくれてます.(もちろん,証明を省いているところもありますが.)
掲載されている分布なども多いです.
しかし,初学者がこれを手に取るのはかなり厳しいんじゃないかなと思います.
そもそも,初学でなくてもこれを進めるのはかなり骨が折れます.
このテキストは数式の行間を埋める作業が多くなりがちなんですが,根気よくやらないと途中で急にわからなくなります.
より入門的なテキストとして,ここでは篠崎・竹内統計を挙げておきます.
篠崎・竹内統計は僕が学部1年のときに統計学の先生から紹介していただきました.
文系学部の教養向けに指定していた教科書ということですので,数学的なハードルは上記のテキストよりずいぶん低くなります.
個人的にはとても分かりやすかったですし,かなりいいテキストだと思います.
なぜか評判を聞きませんし,大きな書店にもないことも.
もっと広まれ.
加えて,友人が読んでいたテキストも紹介させていただきます.
これも丁寧な展開で読みやすいな,という印象を受けました.
レベルは篠崎・竹内統計より少し高いかな,程度じゃないかと.しっかり読んでいないのであまり当てになるものではないですが.
ともかく,初学者は篠崎・竹内を含め,このあたりのテキストから始めるのがいいのではないかなと思います.
計量経済学などへの応用
統計の知識を一通り頭に入れたら,ともかく次の2冊を読みましょう.
別に統計学を学ぶ前でも,学ぶのと並行してでもかまいません.読みましょう.
計量経済学でよく出てくる,操作変数法やRDDなど,様々な手法について直観的な解説を行っています.
まずはこれらの本で,各種分析手法がどういう発想で行われているのかを理解しましょう.
これらの本を読んだら,次は山本(勲)計量をお勧めします.
一通りの統計学の知識があればスムーズに読めると思います.
この本は,理論的なことよりも,「ある程度の実証分析の論文の結果を理解できるよう,その読み方を指南してくれるもの」だという印象です.
これは卒論を書くために非常に重要だと思っています.
というのも,たいていの人は卒論の先行研究をGoogle Scholarなどで探すとき,まずは日本語の研究を探しに行くのではないでしょうか.
おそらく,このとき見つける多くの論文は実証分析を行っていると思います.
何も知らない状態からそれらの論文を読もうとしても,分析結果の読み解き方がわからず,先行研究が何をやっているのか全く分からない,ということが多発します.
読み方を知っておけば,ある程度の参考文献が集まるようになると思います.
理論的な背景をちゃんと把握したい場合,学部向けテキストで評判の良いものといえば,山本(拓)計量でしょうか.
学部で必要であろう計量経済学の知識は 一通りこれに入っているのではないでしょうか.ただ,これを進めるのは結構大変です.
このようなテキストで理論的な背景を知ることはもちろん大切ですが,実際のところ,卒論などでも回帰分析をやってみる程度という学部は多いのではないかなと思います.
回帰分析の知識はほとんどの入門向け統計テキストでカバーされていると思いますし,実際,統計のテキストに挙げたものも,カバーしています.
ゆえに,計量分析を学部からもそれなりにきっちりやりたい学生や,コアの前に基礎知識を付けたいと思う院生などにはいいテキストとなるかなと思いますが,そうでない方にとっては少しオーバーワークかなと思います.
もちろん,学問にやりすぎはないんですが,学部生は4年間という時間の制約のもとにあるので,それも考えたいところかと.
まとめ
結構ばらばらと紹介してしまったので,ここでまとめておきます.
まず最初にすべきことは,統計学のテキストを一つやりきることです.
その後,原因と結果の経済学,データ分析の力を読み,山本(勲)計量をやる.
卒論の分析を(クロスセクションの)回帰分析で行うつもりの方はこんなところでとりあえず卒論は書けるのではないかなと思います.
付記
統計や計量のテキストに入る前にまず,初年度の統計学の入門向け講義を受けることをおすすめします.
そのような講義がないのであれば,直接テキストに入って自習もいいですが,統計学は確率を使ったり,標本がどうとか母集団がどうとかややこしいことも多いので,やはり見通しが悪くなりがちです.
周りに質問できる人を作っておくとよいと思います.
そしてまず大前提ですが,統計のテキストを読むには積分表示に慣れておく必要があります.
今回紹介しているレベルのテキストでは,積分計算としては大したことはしませんから,数IIIを履修してから進学してきた方にとってはそこまで苦ではないでしょう.
しかし,積分に触れたことのない方は,積分計算がどのようなものかという概念ぐらいは知っておかないと途中で足が止まってしまうかもしれません.
足が止まったら経済数学で積分を扱っているテキストに戻って,特にその図形的な意味を頭に入れておきましょう.